藤原先生による教育コラム

大学入学共通テスト

1月に、大学入試センター試験に代わる新しい入学試験である「大学入学共通テスト」の第1回目が実施されました。英語については、リスニングの比重が増えたこと、文法知識をストレートに問う問題が消えたことなど、大きく変わった点がいくつかありますが、私が注目したのは「事実と意見」の区別を問う問題が何問か出題されたことです。

事実と意見

連載Vol. 1では英語ディベートの効能を8つ述べましたが、その1つに「信憑性のある記事を見抜く批判的思考力(クリティカル・シンキング)」を挙げました。インターネットが社会の中に急速に浸透し、誰もが発信者になることのできる現代においては、これまで以上に私たちには事実と意見の違いを見分ける力が求められます。そうしないと、いわゆる「フェイクニュース(嘘の記事)」に振り回されてしまうからです。共通テストの出題にもそういうメッセージを読み取ることができるでしょう。

ディベート論題の種類

ディベートでは、常に1つの論題(テーマ)について肯定・否定に分かれて議論を交わしますが、論題はその内容により、大きく「事実」と「意見」に分けることができます。そして、意見は「価値」についての意見と、「政策」についての意見の2つにさらに細分化することができます。例を挙げてみましょう。

1.事実論題の例

 ①過去の事実:「邪馬台国は九州にあった。」
 ②未来の(起こり得る)事実:「2045年に人工知能が人間を超えるだろう。」

2.価値論題の例:
「日本は世界一住みやすい国である。」
「夏より冬のほうが暮らしやすい。」

3.政策論題の例:
「死刑制度は廃止すべきである。」
「2021年の東京オリンピックは中止すべきである。」

政策論題は価値論題の発展形と言えます。例えば「死刑廃止」という政策を提言する前提には、「死刑はよくない制度だ」という価値判断(意見)があるからです。

では最初の話に戻って、そもそも「事実」と「意見」すなわち「価値判断」との決定的な違いは何でしょうか。
話がちょっと複雑になってきましたので、続きは次回に譲りたいと思います。

次回につづく。

藤原敏晃先生

同志社大学文学部・法学部卒業。 Z会で30数年勤務し、通信添削・出版・教室事業すべてを経験。退職直前の数年間は海外大学進学者向け英語スクールにて取締役。直近の数年…