藤原先生による教育コラム

引き続き、事実と意見の違いについてお話ししたいと思います。
前回、ディベート論題の種類について述べましたが、今回はより一般的な話として、事実と意見の見分け方を整理したいと思います。

「事実」と「意見」の違い

事実 ⇒ 客観的に証明することができる
意見 ⇒ 客観的に証明することができない(=人により見解が異なる)

両者の違いを簡潔に定義すると、上述のようになります。例えば「富士山は日本で一番高い山だ。」これは事実であり、測量という科学的手法により証明できるので、現時点では真実と言えます。一方、「富士山は日本で一番美しい山だ。」これは人によって意見が分かれます。富士山がもっとも美しいと感じる人もいれば、そうではない人もいるからです。客観的に証明できない、単なる一個人の見解や感想は意見に過ぎないということです。

客観的に証明すること

 ただ、「客観的に証明することができる」というのは実はそう簡単ではありません。裁判という制度が存在するのがその証拠です。例えば、ある殺人事件が起こったとき、誰かが誰かを殺したことは事実と言えますが、誰が殺したかについては、現場に当事者(犯人と被害者)しかいないかったとしたなら、生き残った犯人にしか真実はわかりません。裁判官も含め現場にいなかった第三者は、状況証拠や何らかの客観的証拠(DNA鑑定など)を基に、何が真実なのかを「推定」するしか方法はありません。それがまさに裁判の役割です。
 過去の歴史的事実はディベートの論題になり得ますが、限りなく100%に近いレベルまで歴史学者らの見解が一致するまでは、それぞれの学説は意見であって事実とは言えません。例えば、前回例に挙げた「邪馬台国は九州にあった」はその意味で、まだ事実ではなく一意見であり、「畿内にあった」という学説との間で今も議論が続いています。

ネットリテラシーの必要性

 誰もが自分の意見を発信できるようになったネット時代の今、お子様には、ネットに書き込まれていることの真偽を見分ける力、ネットリテラシーが求められます。共通テストで事実と意見の区別を問う問題が複数出題されたのも、こうした問題意識が背景にあると言えます。次回はもう少し具体例を挙げながら、両者の区別の仕方の話を続けたいと思います。

次回につづく。

藤原敏晃先生

同志社大学文学部・法学部卒業。 Z会で30数年勤務し、通信添削・出版・教室事業すべてを経験。退職直前の数年間は海外大学進学者向け英語スクールにて取締役。直近の数年…